天草に引っ越してきて、ハローワークに出向いて驚いたのは、総じて賃金レベルが都市圏よりも低い(それも半分くらいに)ことです。
たとえば、正規看護師の募集賃金は、関東圏なら月40万円以上だと思いますが、天草では月20万円から25万円。これでも雇用賃金としては高額な部類です。民間事業者に雇用される場合の賃金は総じて月15万円前後。時給換算800円前後で、都市圏の学生アルバイトにも劣り、都会の単身者なら貧困レベルです。
対して、市役所の正規職員の給与は全国レベルで平均年収600万円を超え、当地ではハイレベルです(臨時職員は賃金月10万円程度で一年契約。正規との格差はすざまじく、精神面でも辛そう)。雇われの土木現場技術者も月35万円以上は確保できるようです。
天草下島南部には、老人の単独家庭が多いのですが、家族持ちの場合、たいていは共働きです。
アッパーミドルは、夫が市か郵便局の正規職員または天草外で荒稼ぎする土木系現場技術者、妻が看護師や郵便局勤めという例が多いです。これで家庭年収1000万円レベルに達します。子供たちを天草外に下宿させて高等教育を受けさせたり(熱心は一部の家庭では高校から福岡の全寮制校に入れたり)、子供がいない場合はクルーザを所有したりします。
ローワーミドルのモデルは、共稼ぎでも夫が地元の民間事業者に雇用され、家庭年収500万円程度。街で家族経営する事業者も、大体このレベルで、大して儲かっていないところが多いと思います。子供は地元高校までというのが通例のようです。
漁業系の網元や流通加工事業者は、かつては羽振りが良かったと聞きますが、魚が来ない、ないしは、沿岸では獲れない昨今はどうでしょうか。自営の大工や左官は総じて金回りがよく見えます。両者とも、帳簿を見たことがないので、その懐事情は僕の推察外です。
財を生み出さない市の職員や病院関係者が高給を取って経済的に上位にあり、経済活動に携わっている者が比較低位に置かれています。皆、買い物は大規模スーパーマーケットで済ませるし、大工と車修理くらいが地元でお金が回る自営事業です。地域としてみて、キャッシュの流入を税金(市職員の給与や病院への補助金の多く)に頼り、流出先は地元外の資本(自動車メーカとか全国チェーン)に偏っていて、地元に滞留・循環するのは、官から地元外資本への動脈の脇から漏れる微々たるキャッシュのみという構造です。
畑も田も余っているから、現金収入が少なくても暮らしていくことはできるはずですが、皆さん結構浪費家です。いい家に住んで、車も成人の数だけ持って、飲み食いや付き合いや便利さにもお金を奮って、当然としているように見えます。天草だけではないと思いますが。
でも、考えてみれば、賃金の安さは、生み出す商品やサービスの価格競争力を高めることができる要素です。消費地から遠い点がデメリットになるのは、重く大きい商品(農産物とか)を扱うから。送料全国一律に設定できる小物を扱えば、遠隔地のデメリットはなくなります。潤っていない地域だから、地元のヒトの能力を活かせすことができれば、ニッチな商品サービスでよいわけです。ヤフオクだのメルカリだのラクマだのを使えば、ネット通販も決済も初期投資や固定費要らずだし、出荷品の郵送トレースも簡単。
そこで、キャッシュを、官や税に頼らず、潤沢な地域から地元に持ってくる遊びができるのではと。遊び半分という意味でなく、成功の基準を規模や売上金高でなく、ニッチな経路を拓くことに置くという意味です。宿題引き受け株式会社みたいなものです。
布ぞうりは、第一弾です。﨑津を訪れて、布ぞうりを手にとってくれた奇特な方々の好奇心にすがり、ネット上で天草のリアルをもっと知ってもらい、ついでに、産品も広めてもらう。
次のネタを考えているところです。老時計店主による、機械式腕時計の修理サービスなんてよいのではとか。修理済み証にはもちろん﨑津天主堂のイラスト入りで。羊角湾の真珠も、東京ガールズウォークと組むなど一捻りするとよい商材になると思うんですが。
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