熊本県天草市、﨑津から山に入った今富は西河内の集落。そのまた一番奥にある畑の中の作業小屋で、米寿の翁が中心になって、畑仕事の傍ら、もう何十年とワラ細工を続けてきています。
近隣の祭りミコシの担ぎ手が履くワラジ、正月しめ縄の多くは、今もこの88歳の翁の手足に拠っています。昔のことを良く覚えているので、大学の先生やら学生やら郷土史研究家やら新聞記者やら、このあたりを調べにきた人たちは必ずこの小屋に立ち寄っていきます。様々な野菜類の植え付け時期も、翁に聞けば間違いありません。
スローながら、その年齢を考えると多事な日常の合間に編まれてきたのが布草履です。家々からは、折々、ワラや布が届けられます。常連の老婦人たち(*)が、山への散歩の際に立ち寄って、お喋りしながら、時にしめ縄のバリ取りをし、時に布ぞうりのために布を裂き、鼻緒を縫い、何くれとなく世話を焼いています。
布草履は、ワラ草履をもとに、室内履きとして考案されました。カラフルな布織りの底部は素足に心地よく、鼻緒は足の甲が擦れにくいよう綿入れや布芯に工夫してあります。洗濯機で洗い脱水することができます。詳しくはこちらを
* これまた八十歳をすぎて独り暮らしのみなさん(血はつながっていないが同姓の近戚)ですが、何の、お互いに毒舌で応酬しながら、春はツワ(フキの一種)を採りに幼いころから歩き馴れた山道を5km先の峠まですたこら往復し、秋は川に罠を仕掛けてガネ(川カニ)を捕って庭でガネ会を開きと、とまあチャーミングな人たちなのです。
0 件のコメント :
コメントを投稿